近頃、ビジネスシーンにおいて当たり前のように使われるようになったキーワード「SDGs」。しかしSDGsの本質をしっかりと理解せずにこの言葉を使ってしまったり、日々の業務やサービス作りに活用することができなかったりしている場合が多いのではないでしょうか?とりわけ、SDGsの取り組みをする中でサービスの体験をどのように構築すればいいのかに悩んでいる方は多いのではないかと思います。
本記事では、SDGsの取り組みを進める中でどのような観点でUX(ユーザー体験)を設計することが重要なのかはもちろん、その具体例も含めて解説します。
目次
SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals)は、国際連合が2015年に採択した17の世界的な目標を指します。これらの目標は、2030年までに貧困、飢餓、不平等、環境問題などを解決し、持続可能な未来を築くことを目指しています。
地球規模で国境を越えて連携し、各国が一体となって共通のチャレンジを行うためのグローバルな行動計画として位置づけられています。経済、社会、環境など多面的な側面を包括し、誰一人取り残さないインクルーシブな社会を築くことが目的とされています。
UXとは
UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略でユーザーが購買サービスの利用を通じて得る体験全体のことを指します。 とりわけITサービスの画面の美しさや使いやすさなどの利用体験だけに焦点を当てて語られることが多いですが、実際はオンライン / オフライン問わずユーザーが得る体験についてはその全てを指します。
SDGsの取り組みにおいてUXが注目される理由
では、SDGsの取り組みにおいてなぜUXが注目されているのでしょうか?さまざまな観点が存在していますが、大きく分けると以下の2つになります。
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インクルーシブな社会の実現に貢献できる
前提として、SDGsは社会全体に利益をもたらすことを目指しています。そしてその中には異なる育ち方や能力の様々な人々が存在しています。そう言った中でどういったユーザーに対しても、アクセシブルで使いやすい製品やサービスを提供するために、UXデザインは不可欠といえるでしょう。バリアフリーで包括的なデザインは、誰もがSDGsの恩恵を享受できるようにする重要な手段になります。
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ユーザーの行動変容に深く結びつく
SDGsの成功には、人々がそれぞれの場所で個々の行動や意識の変革を起こすことが欠かせません。UXデザインは、情報を分かりやすく伝え、ユーザーが行動に移しやすい環境を提供することで、持続可能な行動を奨励していくことができます。良好なUXはユーザーを引き込み、持続可能な価値観に共感させ、結果として行動変容に繋げることが期待できます。
SDGsの取り組みにおいてUXを重視するメリット / 効果
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1人でも多くの参加を募ることができる
前述のように、わかりやすく使いやすいデザインは、異なる背景やスキルを持つ人々にとってもアクセスしやすいデザインと言えます。これを用いることで、SDGsに関連する情報やサービスをより多くの人に届けることが可能になります。持続可能な行動への参加がますます広がり、個々の貢献がどんどんと積み上がっていくことで大きな影響を生み出すことができるようになるでしょう。
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具体的なアクションを起こすことができる
魅力的で分かりやすいデザインは、ユーザーに持続可能な価値観や行動の重要性というものをよりダイレクトに伝えることができます。情報の効果的な提示や人々を魅了するようなデザインにより、ユーザーが自らの行動や消費に対して考え、持続可能な選択をする傾向を生むことが大いに期待されることでしょう。これによってますます、個々の行動が持続可能な社会の形成に貢献していく状態を作ることができます。
SDGsの取り組みにおいてUXを重視したプロジェクトを推進する際の注意点
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ユーザーの多様なニーズに関する深い調査を実施する
そもそもUXデザインにおいて利用者が直面する課題やニーズを正確に把握し、それに基づいて製品やサービスをデザインすることが重要になります。特にSDGsの文脈では異なるバックグラウンドや文化を考慮した包括的な調査というものが大きな意味を持ちます。ユーザーの声に耳を傾け、彼らの期待に応えるUXデザインを構築することで、SDGsの目標に向けた積極的な参加や意識の向上が期待できることでしょう。
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アクセシビリティ・包摂性の確保
前述のように、SDGsでインクルーシブな施策を行う上では、異なる能力やバックグラウンドを持つユーザーが利用しやすいデザインを心がけることが不可欠です。誰もがプロジェクトに参加しやすいということを第一に考え、差別がなくバリアフリーなデザインを意識することで高いアクセシビリティを常に維持し続けることが大切になります。
UXを重視したSDGsの取り組みの事例
ここでは国連が掲げる教育プロジェクトである “Education For All”(EFA)のデジタル教育プラットフォームの導入を例に挙げて記載します。
そもそも、SDGsの観点で主に教育として以下の観点で課題が存在していました。
- 教育格差やアクセスの不平等が存在し、特に発展途上国では十分な教育機会が提供されていない
- コロナウイルスのパンデミックにより、対面の教育が制限され、遠隔教育の需要が急増している
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施策
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様々な環境に対するレスポンシブな体験の提供
利用者の利便性を重視し、異なるデバイスや接続環境に対応したユーザーインターフェースを提供しました。
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マルチリンガルサポート
利用者の多様性に対応するため、言語や文化に敏感なデザインを導入し、複数の言語で学習を可能にしました。
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オフラインモードの提供
低所得層や地理的に離れた地域の学習者にもアクセス可能なオフラインモードを提供し、学習の中断を最小限に抑える施策を実施しました。
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結果
施策の結果として、グローバルに、デジタルプラットフォームを展開しアクセスを堅調に伸ばすことができました。また、継続的な学習を促すことで学習者は自分のペースで学ぶことができ、職場や家庭との両立が容易になったり、フィードバックを元にした改善を行うことでき多くの支持をえることができました。
これによって “Education For All” のプロジェクトがますます拡大し、発展途上国の多くの学習者が教育にアクセスでき、結果として教育格差の縮小を実現、SDGsに大きく貢献することができました。
UXを重視したプロジェクトを推進するためには
自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得ることができずプロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
結論 / まとめ
改めて、SDGsという昨今の注目テーマにおいてUXはますます重要な役割を果たしていくであろうことがわかりました。今後も、様々な企業がSDGsの取り組みを推進し、その中でUXを重視しながらさまざまなプロダクトを生み出していくことが予想されます。これを機に、自社のSDGs施策について再度目を向けてみる、あるいはその中でユーザー体験を考え直す余地があるかを検討してみてはいかがでしょうか?
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