昨今、テクノロジーの進化によって我々の生活は大きな変化を遂げています。ひと昔前は存在しなかったプロダクトが世の中に届けられていく中で、顧客のニーズも大いに多様化しています。そのような中で、市場における顧客のニーズに関する仮説を立て、検証を行い、より良いプロダクトを作り上げていく方法が多く生み出されてきました。
本記事では、近年、マーケティング分野において注目を集める「プロトペルソナ(proto-persona)」というキーワードについて、そのビジネスにおける重要性とあわせて解説していきます。
目次
プロトペルソナとは
「プロトペルソナ(proto-persona)」とは、商品やサービスのターゲット層を具体的な人物像として設定するマーケティング分析手法の一つです。プロトペルソナを利用することで、企業は消費者のニーズや欲求をより深く理解し、効果的なマーケティング戦略を展開することができます。
通常のペルソナとの違いとしては、既存の情報をもとにまずはサービスとして想定すべきペルソナを仮でいいので作ってみるという点です。いわゆる、マーケティング戦略検討におけるペルソナを形成する際には入念な調査や分析が必要になります。しかし、そういった工程をスキップして仮のプロトペルソナを設定することで、スピード感を持ってユーザー体験やサービス訴求方法などをより具体的に検討していくことが可能になります。
プロトペルソナ作成のプロセス
プロトペルソナは、大きく3つのプロセスで設定します。これは通常のペルソナを作成する際と大きくは変わりません。
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プロジェクト内で議論をする
プロジェクト内のメンバーが想定しているユーザー像をまずは集めることで、偏りのない意見を集めることができます
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議論内容から全員のイメージに近しい内容を集約する
議論した内容から、共通しているニーズや課題、ライフスタイルなどの要素を整理することでメンバー内の共通の認識を明らかにすることができます
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簡易的なペルソナの内容として言語化する
②のステップで整理した内容を、ペルソナのフォーマットとして言語化することで常に皆が立ち返るべきドキュメントが完成します
通常のペルソナと決定的に異なる部分は、追加で調査や分析などを行わない点です。あくまで、今ある情報やプロジェクト内の仮説を集約し、共通の認識を取るためにユーザー像を具体化していくことをゴールにします。
プロトペルソナの活用が注目される理由
近年、主に以下の2つの観点でプロトペルソナの設定・活用が注目されるようになっています。
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スタートアップそのものが流行している
近年はインターネットやモバイル技術の進歩により、新たなビジネスモデルを簡単に開発・試験することができるようになりました。思い立ったビジネスアイデアをすぐに形にすることが簡単になった時代にこそ「ユーザーに関する仮説を立てて、まずはやってみる」というプロトペルソナの活用に注目が集まっています
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ビジネス環境がよりスピード重視になっている
テクノロジーの発展によりサービス展開が容易になってくるにつれて、マーケットシェアを獲得するため、製品の開発・市場への参入スピードが鍵となります。その中で、前提の調査や分析に多大な時間をかけずにスピーディーにユーザー像を具現化しサービス開発に取り掛かることのできるプロトペルソナ活用に注目が集まっています
プロトペルソナがもたらすメリット / 効果
プロトペルソナを活用してサービス開発を行うことで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?大きくは以下の2点にまとめることができます。
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スピード感の加速
プロトペルソナを作成する際には、調査や分析は最低限にとどめて、まずはユーザーに届けてみることを重視します。実際に届けた上でフィードバックされた意見をもとに新たな開発を行うことでシンプルかつスピーディーなプロジェクト推進を行うことができます
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リスクの低減
プロトペルソナを作成することで、プロジェクト内の様々なステークホルダーの声を聞きながら、ターゲットユーザーを想定しUX(※)を高めていくことが可能です。ユーザー像を考えることなくプロダクト開発をしてしまうことで陥りがちな、ターゲットのズレを回避しながらプロダクト開発を行うことができます
※UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略でユーザーが購買サービスの利用を通じて得る体験全体のことを意味します。とりわけITサービスの画面の美しさや使いやすさなどの利用体験だけに焦点を当てて語られることが多いですが、実際はオンライン / オフライン問わずユーザーが得る体験についてはその全てを指します。
UXの重要性に関しては過去の記事「DX推進にはなぜUXが重要なのか」を参照
プロトペルソナを活用する際の注意点
多くのメリットがあるプロトペルソナの活用ですが、以下にあげたような点に注意することが必要です。
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多くの視点から複眼的に検討して設定することが必要
プロトペルソナは仮のペルソナだからといって、誰か1人の個人の感覚や経験に頼って決めてはいけません。仮にも検証段階に、意思決定の際の依拠すべき情報となるのでビジネスサイドから開発サイドまでを巻き込んで全員で会話して決めていくことが重要になります
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柔軟な修正・改善が必要
そもそもファクトベースではなく仮説をもとに出来上がっている情報なので、実際にサービスを届けたりしていく中で明らかになってくる情報が多くあります。その検証の過程で常にターゲットユーザー像に近い内容にアップデートしていくことが必要になります
プロトペルソナを用いた成功事例
実際に、プロトペルソナを用いることでどういった成功を収めることができるのでしょうか?頻繁に話題に挙げられる例として、ビジネスチャットツールの「Slack」の事例を紹介します。
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背景・課題
Slackはビジネスチャットツールなので、利用するケースやユーザーの職能も様々でどういった機能が本当に必要とされているのかを明らかにする必要がありました
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成果
様々なビジネス上のユースケースを分岐して想定しプロトペルソナを作りました。それに合わせた機能やインターフェースを提供して顧客にフィードバックをもらい改善を進めることでユーザビリティを急速に高めることができました。例えば、エンジニア向けにはコードのシンタックスハイライトやGitHubとの連携機能を、デザイナー向けにはイラストやスケッチの共有機能を提供するなどが挙げられます
UXを重視したプロジェクトを推進するためには
自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得ることができずプロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
結論 / まとめ
プロトペルソナを活用することで、企業は商品やサービスのターゲット層を具体的な人物像として設定することができます。これにより、消費者のニーズや欲求を深く理解し、より効果的なマーケティング手法を展開することができます。この機会に、新規・既存に関わらず、事業・サービスの顧客に再度目を向けてプロトペルソナを作成し議論を交わしてみてはいかがでしょうか?
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