現代において、テクノロジーの進化がますます加速している中、新規事業を起こすことは前例のないほど容易になっています。新しい技術が生まれるたびに、市場はさらに多様化し多くのニーズが生まれ、その結果として多くの新規事業のチャンスが至る所に隠れています。
本記事では、昨今、新規事業の開発のツールとして話題になっている「リーンキャンバス」について、そのビジネスにおける重要性とあわせて解説していきます。
目次
リーンキャンバス(Lean Canvas)とは
リーンキャンバス(Lean Canvas)とは、スタートアップ企業や新規事業の立ち上げに役立つビジネスモデルの整理方法の1つでその方法や成果物そのものを意味します。アメリカの起業家であるアシュ・マウラによって提唱されました。
リーンキャンバスのフレームを活用することでビジネスモデルを簡略化し、よりスピーディーに事業アイデアを検討・改善することができます。
現在、日本では、リーンスタートアップ(※)という言葉が広く知られるようになり、リーンキャンバスを用いたビジネスモデルの検討や改善、実証実験を行うことが一般的になってきています。
※リーンスタートアップとは多大なコストやリソースをかけず、最低限の機能を持った試作品(プロトタイプ)を短い期間で構築した上で、利用する顧客のレビューや感想を集めて、更に満足度の高いサービスを開発していくアプローチ方法のことを指します。
リーンスタートアップに関しては過去の記事「【話題のキーワード ‘リーンスタートアップ’ を解説!】ビジネスにおける重要性とは?」を参照
リーンキャンバス作成のプロセス
リーンキャンバスは以下に記す9つの要素で構成されており、順番にその内容を検討していくことでビジネスモデルの全体像を1枚のキャンバスのような形で整理することが可能です。
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課題
顧客と想定されるセグメントが抱える課題について簡潔かつ正しく整理します。
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顧客
ターゲット顧客を特定し、顧客のニーズ、欲求、特性、行動などを理解します。
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独自の価値提案(ハイレベルコンセプトを含む)
自社のサービスやプロダクトを通じて、どのようなユニークな顧客価値を提供できるかを言語化します。
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ソリューション
製品やサービスが顧客にどのような価値を提供するのかを明確にします。
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チャネル
製品やサービスを顧客に提供するためのチャネルを決定します。
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収益の流れ
製品やサービスを提供することで得られる収益の源泉を特定します。
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コスト構造
ビジネスを運営するために必要なコストを特定し、最適化します。
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主要指標
サービスを定点評価していく指標をKPI(Key Performance Indicator)として設定します。
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圧倒的な優位性
競合他社が敵わない優位性(強みや差別化ポイント)を記載します。
これら9つの要素は互いに深く連関して一つのプロダクトが完成します。各要素を独立して検討するのではなく、それぞれを検討する中で全体を照らし合わせてみて、行ったり来たりしながら検討を進めることが必要になります。
リーンキャンバスが注目される理由
近年、主に以下の2つの観点でリーンキャンバスが注目されるようになっています。
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スタートアップそのものが流行している
近年はインターネットやモバイル技術の進歩により、新たなビジネスモデルを簡単に開発・試験することができるようになりました。思い立ったビジネスアイデアをすぐに形にすることが簡単になった時代にこそそのアイデアを形にするための最適なプロセスとしてリーンキャンバスに注目が集まっています
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ビジネス環境がよりスピード重視になっている
テクノロジーの発展によりサービス展開が容易になってくるにつれて、マーケットシェアを獲得するため、製品の開発・市場への参入スピードが鍵となります。その中で、必要な項目を正しいプロセスで検討することのできるリーンキャンバスのフレームが重宝されるようになっています
リーンキャンバスがもたらすメリット / 効果
リーンキャンバスを作成することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?様々ありますが大きく以下の2点にまとめることができます。
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ビジネスモデルを簡素にすることができる
必要な要素を正しいプロセスで検討することができるのでムダのない検討ができます。とりわけ、ビジネス開発の初期は不要な検討をしてしまったり価値の低い機能を作ってしまったりするケースが多い中で、本当に必要だとされる点にフォーカスすることができます
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検証ポイントの特定が簡単になる
ビジネス開発の初期フェーズでは、プロダクトの価値を高めるためあるいは多くのユーザーに使ってもらうために明らかにしなければいけない内容が山積みです。そう言った検証ポイントを改めてリーンキャンバス上で構造的に把握することができるので正しい初期検証をおこなうことができます
リーンキャンバスを活用する際の注意点
多くのメリットがあるリーンスタートアップの手法ですが、以下にあげたような点に注意することが必要です。
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時間をかけて検討をおこなうことが必要
リーンキャンバスの内容を整理し各所と合意すると、そこにある内容を元にさまざまな意思決定がなされるようになります。すなわち、リーンキャンバスの内容の検討が中途半端であるとその後のプロダクトに関わる方針が全て筋違いなものになってしまい、最終的には失敗に至ってしまうリスクが増えてしまいます
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継続的なブラッシュアップが必要
リーンキャンバス自体はあくまでその時における市場や顧客、ソリューションの内容に過ぎません。例えば、競合の出現など市場に変化が生じた場合や、機能開発により新たな価値を提供できるようになった場合にはそう言った内容をアップデートして常に最新の内容を共有できるようにする必要があります
リーンキャンバスを用いた成功事例
実際に、リーンキャンバスを用いることでどういった成功を産むことができるのでしょうか?頻繁に話題に挙げられる例として、Zapposの事例を紹介します。
Zapposは、アメリカに本拠を構える靴を中心としたアパレル関連の通販小売店です。1999年にニック・スウィンマーンによって創業され2009年には、世界的なECサイトを運営するAmazonに買収されました。
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背景・課題
もともと、Zapposの創設者ニック・スインマーンは「靴をオンラインで買う顧客は存在する」という仮説を持っていました。その仮説について、リーンキャンバスを中心としてフレームワークを用いて整理した上で仮説について検証すべき論点を洗い出しました。
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成果
リーンキャンバスを用いて整理した内容について、「靴のオンラインショッピングにおいて優れた体験のニーズが十分に存在するか」と「どういった指標を重視すればビジネスが成功するか」を明らかにする必要があるとわかり検証を行いました。
結果として、顧客満足度を重視し、靴の品質や返品ポリシーなどを改善・向上することに主眼をおく方針を決定し、のちに多くの顧客を獲得することに成功しました。
UXを重視したプロジェクトを推進するためには
自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得ることができずプロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
結論 / まとめ
市場のニーズの入れ替わりが激しい昨今、自分自身や社内にあるビジネスアイデアを形にする価値は大きな高まりを見せています。しかし、ビジネスのプランの根幹が正しいプロセスで丁寧に検討されていないと、せっかくの貴重なアイデアを具現化し顧客に価値を届けることは難しいです。
新規事業の開発やスタートアップ起業の際はもちろんのこと、既存のサービスも含めて今一度ビジネスの価値を正しく整理するためにリーンキャンバスを作成してみてはいかがでしょうか?
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