昨今、テクノロジーの進化により我々の生活は様々な変化を遂げています。SNSなどのコミュニケーション方法の変化に、未曾有のコロナ禍の影響も加わり、日々の行動の多くが急速にインターネット上で完結するようにシフトしてきました。結果として、「インターネット上におけるユーザーの体験」に対する注目が大いに高まっています。
本記事では、前回の「課題整理編」に続くかたちで、昨今ビジネスの現場において話題になっているUXデザインというワードについて解説するとともに、その改善を実施する要件定義のプロセスについて説明します。
目次
UXデザインとは
はじめに、UX改善のプロセスに関して説明する前に、昨今のバズワードである「UXデザイン」について説明します。
UX(User Experience)とは、ユーザーがサービスやシステムを実際に利用する中で得る顧客体験のことで、オンライン・オフラインを問わず顧客体験の全てを指します。
すなわち、UXをデザインするということは、ユーザーに「また体験したい」「いいサービスだった」と思ってもらうために、顧客体験をよりよく設計していくことを意味しています。
UXデザイン改善のプロセスとは
UXデザイン改善は以下に図で示すような形で進んでいくことが一般的です。もちろん例外はありますが、基本的には机上で課題を整理し要件を決めた上でプロトタイプを作成しテストをすることで最終的に開発・実装までをつなげていきます。
本記事で解説する「要件定義」はUXデザイン改善におけるセカンドステップとなっており、後述するように、改善施策に必要な条件を決定するための非常に重要なフェーズと言えます。
要件定義の進め方
要件定義とは、一般的なシステム開発において、ビジネス要求を踏まえてベンダー側でシステム開発の概要 / ゴール / 機能 / 予算 / 工数 / スケジュールといった項目を定義することを指します。とりわけ、UX改善においては前工程で整理した「課題」に対して必要な機能やコンテンツを定義することに重きを置きます。
プロジェクトは要件定義のフェーズで定義した内容を軸に後続の開発の工程が推進されていくため、非常に重要な工程と言われます。要件定義のフェーズを慎重に進めないと必要な機能が不足していたりスケジュールや予算が大幅にずれてしまったり大きな問題を引き起こしてしまいます。
以下に、具体的な進め方を記載します。
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ペルソナの検討
ペルソナとは自社サービスの具体的なユーザー像のことです。机上で検討するものの、まるで実際に実在する人物かのように、年齢、性別、居住地、職業、収入、趣味、家族構成、休日の過ごし方などリアリティのある詳細な情報を設定します。これにより、実際にどういったユーザーを想起するかについてプロジェクト内で認識を合わせます。
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カスタマージャーニーマップの整理
実際にユーザーがどこでサービスを体験し、どこで課題が顕在化するかをマップの形で整理します。具体的な課題の発生ケースを明らかにすることで前フェーズで整理した課題に対する解像度を高めます。
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ソリューション検討
①、②の工程を経て、乗り越えるべき課題に対してできる解決策を洗い出します。インパクトや実現性をもとに優先順位をつけて必要な解決策を導きだします。
ここで重要なのは、一見は解決策のように見える施策案であったとしても、本当に課題解決に繋がるかを慎重に検討すべき点です。あくまで前工程で整理した課題を解決するための要件を決めていることを忘れずに、課題解決にダイレクトに繋がるかを精査する必要があります。
UXデザイン改善における要件定義の重要性
前述のように、UX改善においては要件定義のフェーズが大いに重要だと言われることは少なくありません。その理由は以下の2点とされます。
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必要な機能やコンテンツを間違うとUX改善ができなくなる
案件は、要件定義で決めた要件をスコープにして後続の工程を進めていくことになります。逆にいうと、ここで決めた要件以外の対応はしないことを意味します。すなわち、定義した要件がクリティカルに課題を解決しないものであった場合、UX改善の施策そのものが成功に繋がらなくなります。
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予算やスケジュールにずれが出るとプロジェクトが推進できなくなる
一般的に、要件定義フェーズにて決めた要件をもとに予算やリソースを決めることになります。したがってここで決めた要件が後続の工程で変更されるようなことがあるとプロジェクト自体の運営が立ち行かなくなってしまうことに繋がります。
UXデザイン改善において要件定義をおこなう際の注意点
効果的な改善のために、要件定義を進める上で具体的な注意点は主に以下の2点です。
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様々なステークホルダーの意見を取り入れる必要がある
要件定義は、まさにビジネス検討の段階から開発・実装の段階に移り変わる場面と言えます。ビジネス部署もUXディレクション部署も開発部署のメンバーも全てが一緒になって意見を突き合わせて検討を進めることで初めて成果を生む要件定義が可能になります。
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中途半端な検討だとむしろ逆効果で成果が出ない
ユーザーのニーズに詳しくなかったり、要件の優先度検討をおろそかにしたりすると、むしろ中途半端に検討をした機能やコンテンツがサービスに実装されることになります。また、必要以上のコストやリソースを投下してしまうことで他プロジェクトへの悪影響も発生します。
UXデザイン改善を外部に発注する際の注意点
Xデザインの改善を外部のUXデザインを専門とする会社に委託するというケースも多くありますが、ここではその際の注意点を確認します。
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経験や実績を重要視する
UXというワードが流行に乗っている中、多くのUXデザイン会社が存在していますがそのクオリティやデリバリーは多種多様です。あらためて、過去の実績や担当者の経験といったところを精査して協業先を選択することが重要です。
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課題の認識合わせを丁寧におこなう
UXデザインの会社はあくまでUXデザインの改善が主な業務になります。したがって自社が抱えている課題やビジネスの現状について最も詳しい自社の担当者が、課題整理フェーズで整理した内容について詳しくインプットし認識を合わせることが本当に課題を解決するための改善施策に直結します。
UXデザインにおける正しい要件定義の成功事例
ここでは新規サービスを立ち上げて間もないECスタートアップ企業において、既存のユーザーのアクティブ率を増加させるプロダクト作りが課題とされた際の要件定義の進め方を想定します。
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ペルソナの検討
既存の登録ユーザーの中で最もインパクトの大きいセグメントを掘りだしてユーザーのペルソナを検討します。特に今回のパターンだと以下の要素などは重要なファクターになります。
- 普段どのようなアプリケーションやWebサイトを利用しているか
- 普段の購買行動においてEC割合はどれくらいか
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カスタマージャーニーマップの整理
実際にペルソナ検討が完了したらそのユーザーがどのような経路を経てアクティブ状態になるかについて検討をします。 購買のきっかけから、実際の競合ECとの比較、判断の決め手など細部にわたって洗い出します。
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ソリューション検討
これまでの検討を踏まえて、以下の解決策が効果があると導きだします。
- ログイン導線のユーザビリティ改善
- 競合比で還元率の良いクーポンの訴求
- 商品比較の画像素材の充実化
これらを、ビジネスインパクトや現実性といった軸で判断し、結果的にまずは比較的容易に実装できて効果を生みやすい還元率の良いクーポンの訴求を実施する、という判断で要件を定義します。
UXを重視したプロジェクトを推進するためには
自社でUXを重視した事業開発プロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内において、実際にUXを重視したコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてユーザー体験が軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得ることができずプロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
結論 / まとめ
要件定義と聞くと、開発のフェーズというイメージが先行してしまいがちです。しかしUX改善のプロジェクトにおいては、もう一段ユーザーの動きを深掘りして「本当に必要なこと」を決めていく非常に重要なフェーズになります。
この機会に、様々なステークホルダーと会話をし、自社サービスに本当に必要な機能やコンテンツについて意見を交わしてみるのはいかがでしょうか?
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