ビジネスの現場において「どのようなユーザーになら喜んでもらえるのか」「顧客になかなか魅力が届かない」と日々考えているものの、顧客の理解が足りず、マーケティングに失敗してしまうケースが散見されます。こういった際に、自社の商品や宣伝の改善に目がいきがちです。しかし実際は顧客の分析ができていないが故に「どのようなユーザーをターゲットすればいいか理解していない」場合が数多くあります。
本記事では、自社サービスの顧客分析を行う際に利用される分析方法を3つ解説するとともに、昨今、テクノロジーの発達により顧客の購買行動が複雑化する中での顧客分析の重要性について解説していきます。
目次
顧客分析とは
顧客分析とはその名の通り、自社の顧客の属性やステータス、行動履歴などを分析してより解像度高く顧客を理解していくことを意味しています。
マーケティング戦略や事業戦略を描くなかで、自社の顧客層や顧客ニーズを理解することは欠かせません。これら顧客の理解に加えて、マーケットの潮流や時代のニーズを考慮できている戦略のもとで、初めて競争優位性を持ったサービス設計をおこなうことができるからです。
実際に分析に用いる情報は業界やサービス特性によって変わりますが、その分析の方法については様々な型、すなわちフレームワークが存在しています。
顧客分析において用いられるフレームワーク3選
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デシル分析
デシル分析とは、顧客をサービス商品のために消費した金額の順に10個のグループに分け、それぞれの購買データを分析する手法です。
デシル分析を行うことで、商品金額が高いグループには、継続した購入を促す施策を検討し、消費金額が低いグループには競合への乗り換えや付け替えを予防するといったような施策を検討することができます。またその間の中間層には少しでも消費金額を増加させるために、アップセルを訴求する施策を検討することができます。
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RFM分析
RFM分析とは、Recency(直近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(累積購入金額)の頭文字からなる顧客分析フレームワークです。
RFM分析では、3つの指標をもとに顧客を各ランクに分けることができ、このランクの組み合わせを用いて、顧客の特性にあったマーケティング施策を検討することができます。
- 例)累計購入金額が高いが購入頻度が低い顧客には、再購入を促す仕掛けやインセンティブを検討する
- 直近の購入日が近く購入頻度も高いが累計こ運輸金額が低い顧客にはクロスセルを促す仕立てのキャンペーンを検討する
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コホート分析
コホート分析は、ユーザーを属性や条件でコホートに分け、ユーザーの動向を知るための分析方法として知られています。元々は心理学や社会学において用いられる分析手法で、世代や社会経験によって対象者を分類し実験によってどのような変化が現れるかを観察する手法です。
同じ条件のユーザーを分類してその後の動向などを観察し分析することで、ある条件がもたらすその後のアクションへの影響などをインサイトとして抽出することができます。
条件は様々なものが用いられ、「同じ広告を見たユーザー」をコホートに分け、月ごとの成約率や消費金額の変化をおったりすることもあれば単純に性別やデバイス、活動時間帯のような条件で分けることもあります。
近年では、SaaSサービスのような長く使ってもらうことでマネタイズするビジネスモデルにおいてますますこの分析手法が使われるようになっています。
ビジネスにおいて顧客分析のフレームワークが用いられる理由
ここであらためて、昨今のマーケットでビジネスを推進する際に顧客分析が重要であるかについて整理します。時代の流れに応じて大きく以下2つの背景があると考えられます。
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顧客のニーズの多様化
昨今、IT業界を皮切りに革新的な技術が人々の生活をより豊かにしていくに連れて、消費者は今まで存在しなかったようなサービスニーズを持ち始めるようになっています。このような顧客のニーズの多様化に連れて、自社のサービスの顧客がどのようなニーズを抱えているのかを徹底的に分析をおこない、サービスの磨き込みを行うことが必須となっています。
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技術の進歩による競合サービスの増加
昨今の技術革新によって、企業のサービス開発の速度は向上し、止まることなく新たなサービスが生まれては失くなり、また生まれては失くなるということを繰り返しています。このように競合のサービスがひしめく市場においては自社の顧客について細部にわたって分析をおこない、模倣困難な競合優位性を築き上げていくことが必要になってきています。
顧客分析フレームワークがもたらすメリット / 効果
あらためて、ここで施策検討において顧客分析のフレームワークを利用することのメリットをまとめます。これは大きく以下2つに分けることができます。
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確かなインサイトが得やすく次に繋がる分析が可能になる
いざ顧客について分析をおこなうとなっても、闇雲に数値を集めたところで次のアクションにつながる学びや気づきを得ることはできません。一方、フレームワークに当てはめると、ある一定のインサイトまでは得ることができ、そこから新たに深掘りたい視点が増えることで、顧客分析を発展させていくことができます。
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新たな顧客のニーズを発見することができる
いま、目の前にある課題に対して分析をするのではなく、まずはフラットな視点でフレームワークを用いて分析を行うことで、今まで気づくことのなかった視点で顧客を知ることができます。これにより新たな顧客のニーズを把握することができ、さらなる発展的なサービス開発を行うチャンスが得られます。
顧客分析フレームワークを用いる際の注意点
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フレームワークの整理を目的・ゴールとしない
フレームワークを用いて検討を推進すると、一見、綺麗に見えるグラフや数字の票が完成し、そこで満足してしまうケースが散見されます。しかし、あくまでフレームワークは施策を検討するための手段に過ぎません。「必要であれば用いる」くらいの姿勢で、あくまでその前段階にある「何のために分析をおこなうのか?」を最も重要視してプロジェクトを推進することが求められます。
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様々な分析の結果を組み合わせることが重要
分析はあくまで必要な学びや気づきにたどり着くために必要なピースを集めるような作業です。
例えば、デシル分析をおこない購入金額の多さでグループ分け施策を打つというのは単純すぎるため、あくまでも他のフレームワークから得られた結果を補助する指標として捉えたほうがよいと言われています。このように、単一の分析結果ではなく様々な気づきを総合させた結果、成功をもたらす示唆を得ることができます。
顧客分析の成功事例
丁寧な顧客分析によってビジネスが成功した事例として様々なメディアで取り上げられるのが、化粧品サービスを手がけるロクシタンです。 ロクシタンの身近な事例から顧客分析の成功事例を見てみます。 化粧品サービスを提供するロクシタンは、顧客接点(大きくはECサイト / 実店舗の2通り)の複雑化に伴い、一元的なマーケティング施策が打てずに苦戦していました。
その中で顧客を購買行動の観点から分析した結果、ECサイトあるいは実店舗のいずれかしか利用していない顧客よりも、両方を利用している顧客の方が、倍以上も購入頻度が高いということがわかりました。ロクシタンは売り上げの評価を別々にしていましたが、各チャネルの売り上げを一貫して確認することができるシステム改善を実施しました。
結果として、適切なターゲットに施策を打つことが可能になり、購入頻度の高い顧客が増え、120%近い売り上げ向上を果たしました。
顧客分析フレームワークを用いたプロジェクトを推進するためには
デシル分析・RFM分析・コホート分析などのフレームワークなどを用いて、ユーザー中心にプロダクトをつくっていく、デザイン思考を重視したプロジェクトを推進するためには、以下に示すような中長期的な施策をおこなっていく必要があります。
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社内 / プロジェクト内のUX人材育成
社内においてフレームワークを用いたコンセプト設計や検討をおこなう人材が不足している場合は、どうしてもプロジェクトの推進力が落ちてしまいます。人材の育成は短期的に行うことが難しいので、中長期的な目線での人材投資 / 機会創出が求められます。
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組織全体のデザイン思考の重要性の啓蒙
社内やプロジェクト内においてフレームワークのコンセプトが軽視されていると、あらゆる場面において各所の協力を得ることができずプロジェクトが進まなかったり、最悪の場合は頓挫してしまうことも考えられます。
※過去のデザイン思考に関する記事はこちら
結論 / まとめ
テクノロジーが急速に発展する昨今では、消費者の購買ニーズはますます複雑化し、一筋縄で理解することができなくなっています。一方で、技術の発展により顧客の行動データや属性データが容易に取得&活用することができるようになってきており、これは今後もますます加速化していくと考えられます。この機会にいま一度、自社のサービス・商品の顧客について分析を行い自社サービスの今後の方向性について整理してみてはいかがでしょうか?
【今すぐにでもデザイン思考を重視したプロジェクトを推進したい場合は】
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